空は文句のつけようもなくぱっきりと青く、肌に感じる水はあたたかく、体はとても軽い。 私は今、1人だけで光の海に浮かんでいる。

私は羊の耳がとても可愛い存在だと認識している。よくある角だとか、毛だとかではなく、耳だ。耳を羊が痛く感じない程度に引っ張って、耳をフーフーと吹きたい。いじめかよ。あの細長くて白い、それでもって薄くて西日がが射すと、しっかり血が通っていることがはっきりと見て取れる春巻きの皮のような耳が大好きだ。猫の耳も形は違うが薄くて大好きだし自分の耳も人とは少し違う(?)かもしれないが、好きだ。

薄くて、敏感でいて、それでもって繊細に、音を通じて感情だとかその日の天気だとかをしっかり"よみとる"ことか出来る耳は、神の作ったとても高級な造形作品だと思う。

 

耳は触るといつでもひんやりとしている。

生憎、人の耳を触る機会にはあまり恵まれない人生だが、自分の手を耳に近づけて親指と人差し指を擦り合わせて音を立てると「すりすり」と聞こえてきて、その感覚がとても心地よく波打ち際にいるようだ。気持ちはどこまでも浮いていくのに後ろで自分を支えている大きなものがある感じ。とても好きだ。

 

冬の日の早朝、まだ少し空が白み始めてきたくらいの時間に外に出て、鼻から大きく息を吸う。

射すような痛みが胸まで降り、いっぱいになる。程なくして耳が気温の影響でつめたくなり、触った時に痛いくらいの感覚が襲うようになる。

その耳を手であたためてもらうことが好きだった。

じんじんとした血の流れる感覚と冷たさからくる痛み、そして人の手の温もりが好きだった。

景色を真っ白な雲が覆っているような季節の今だからこそ、一面の雪とその光を受けて輝く顔を思い出した。マフラーに顔を埋めたい。じめじめとした天気の中。矛盾しているだろうが、心からそう思った。

 

 

 

冷房の唸りよりも耳元に響く寝息を望みたい。