リルケはバラの棘が指に刺さって、その傷が原因で死んだらしい。
これって本当?
よく分からないけれど、考える事ができているって事は、どうやらまだ私は死んではいないみたいだ。
長い眠りから覚める。
布団の中で、脂質不足でできたであろうささくれを眺める。仮にこの棘を忌み嫌い、取ったとしても、傷付くのは私だけだ。
息を目一杯吸い、吐く。深い溜め息。
息を全部吐き切ると、脳が酸素を欠いて、瞼が重くなる。目がとろんとする。布団にくるまっているので、少し暑い。
頭の中でシューゲイザーがわんわんと鳴る。
音の奔流に呑まれて、鼓膜の振動を通じて脳に伝わる情報を処理するのに時間がかかる。
音楽のことしか考えられなくなる。
轟音の中で、か細い声を探り当てる。
よし。私は今日も生きている。
息を吸う。
私は今日も、生きていかねばならない。
私は全てを見た人になる。
絶望が最後ではないよ。