そんな虫はいない。

 一昨日は忙しい夜だった。

 17時に家に帰って両親の結婚記念日を祝い(そしてすき焼きを食べ)、そそくさとおめかしをして家を飛び出した後は駅まで全力ダッシュをし20時の小田急線に飛び乗って、なにぶんせっかちなもので時間をかなり気にしながら急いで乗り換え、20時50分に吉祥寺に着き、閉店まで残り10分の、ぼちぼち閉店準備をしているキラリナを7階まで駆け上り、啓文堂書店で本を探した。ここまで一息だった。
残念ながら目当ての本は見つからなかったので店舗奥の方の漫画コーナーにあった、なぜかずっと買い集めている漫画の新刊を購入した。これで16巻目である。定価が454円+税であることを考えると消費税増税分も込みで7900円ほどの出費をしているわけだ。8000円があれば、人生を占めるうちの結構なことができると思う。夜行バスに乗れば大体北から西まで行ける(と思う。実際に行ったことはないからわからないが)し、髪は切れるし美味しいものも食べられる。この漫画に8000円の価値があるかどうかと言われると、大抵の人からすればちょっと怪しいのかもしれないが、絵は可愛いし、自分の苦手な所謂日常系というジャンルでありながら進行はしっかりしている。ので、買っている。ので、のでので―。

閑話休題。止まらなくなる。じゃがりこか。

 

そういえば、吉祥寺の駅構内にもう一軒書店があった気がする。確か同じく21時までの。

時計を見る。腕時計は付けていなかったのでスマホの。
21時まで残り5分。

 

大変だ。

 

 エスカレーターを大急ぎで降りてアトレに向かう。残り4分。アトレのブックファーストに到着。残り3分。文庫本を探す。あまりなじみのない出版社の文庫なので探すのに手間取ってしまった。残り2分。ギリギリセーフ!何とか購入することができた。
長らく稀覯書だった(存在だけは知っていたけど)の本を入手できたので、1500円くらいの出費(移動と漫画も入れると2000円は軽く超える)は良しとしよう。

 

 さて、これから21時半の待ち合わせまで暇だし、ちょっとだけつまみ食いしよっかな!!!!(盛大なフラグ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 打ちのめされた。
これだけ圧倒的な熱量で、圧倒的な見識と考察力で本を分析しながら毎日を生きていて、それでいて2000年代初期、ネット黎明期(?)にブログを運営して、毎日に苦痛と快楽とエロスとフェティシズムと趣味と意地と矜持が共存していたなんて。

 自分にはこの本が芸術と評価されるかどうかはわからない(どちらかというと、芸術とは思わない)。けれど、この本(というか過去のブログ)が読み手を意識した「書き物」であろうが、引き出しの奥にしまっておく「日記」であろうが、これほどの密度を持ったものであるとは全く思わなかった。読書スピードと量に関してはまあまあの自信があるけれど、まだ90頁くらいしか読めていない。悔しい。それぐらいに濃厚だ。チョコレートの中に熱された鉄のプラリネが入っているかのような濃厚具合だ。歯応え重文なんてもんじゃない。
 この本を読み終わった後に自分がどうなっているかには見当がつかないが、なんとかこの本を書いた人の本人本位の「人生物語」を17年経った今になって少しでも五感で堪能したいと思う。
 仮に脚がもう2本あっても、もう飛べるだけの力はないだろうに。

 

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 ちなみに待ち合わせは1時間伸びて22時半になった。誤差。