橋の欄干に寄りかかって、海が柱を打つ音を聞いていた。
夜になって人がめっきり減って、自分と海とを隔てるものは何もなくて。
ふと、身を少し身を乗り出して海を覗いてみた。
ぽっかりと空いた大穴のように真っ黒な海が、私を見つめていた。
下の方からは相変わらず波の音が聞こえてくる。
この日のために伸ばしていた髪が鈍い重みをもって、まるで蜘蛛の糸のように垂れ下がった。熱い海水が頬を流れるのを感じた。
潮騒が私を呼んでいる。
私はああはなりたくないと決めた。私は顔をあげた。
海は町の光を反射してきらきらと光った。