ため息とのぞみ

はぁ。

 

ため息をついた。

あ、ムーミンが死んだ。そう無感動に思ってしまった。

さっきからスマホを指でなぞっているけれど、無機質なそれはうんともすんとも言ってくれない。

世界の中で液晶画面だけがくっきりと明るく、私の顔を煌々と照らしている。

 

 

まだいつものブログの更新もされていないし、もう寝てしまおうか。そう思っていた矢先、大仰なバイブレーションの音が部屋に響いた。

スマホに飛びついた。私が犬じゃなくてよかった!犬だったなら、きっとしっぽは節操もなく振り回されていただろうから。

 

耳から聞こえるラジオの音が少しだけ遠くなったように感じた。いつもは妙に耳に残る痺れるような優しい声も、この時間だけは水の中に沈んでしまったみたいに"こもって"聞こえる。

 

あぁ。

 

息が漏れた。

きっとこの人は私にとってどこまでも近く、そして遠い存在なのだろう。そう思った。この人の書く話はいつ読んでも晴れ渡っている冷たい朝のように魅力的で、それでいて拒絶する星のない夜のような声を発している。そんなに苦しいのなら、息をすればいいのに。

 

私は今日も、羊を数えて海に沈む。