感情がないまぜになって走り回った。外の嵐の中をもみくちゃになって、走って、ようやく晴れ間が顔を出したと思ったらそこは台風の目で、また自分が飲まれてしまうのではないかと思い、恐怖した。

色褪せた見慣れた看板、赤いはずの蛍光灯、山の上から見えていたはずの晴れ渡っていた空。そのどれもが、遠くへ行ってしまったような気がした。

目を細めて遠くを見ても、失った笑い皴が海岸に寄せるのを見ることはできなかった。

私はテープを力強く千切った。

とても静かで、落ち着いている。

真っ白な紙の上で、船が呼んでいた。