見逃し三振

下を、水が流れる音がした。足で恐る恐る触ると、ぐらぐらと、中の空洞の深さを思わせる音を出した。臭いなんてそうするはずも無いのに、不快な臭いを思い出して、思わず顔に皺を寄せた。そう言えば、どこかの進化論の学者が顔を歪めるのはどうたらこうたらって言ってたっけ。多分それとは話が違うのだけれど。

どんな人でも、例え冷徹に思える人でも、この臭いを思い出したらにこやかな笑顔をするって事はないと思う。臭いし。

今日は久しぶりに月を見た気がする。十五夜の、まあるい月振りだ。地面にあるマンホールを見て、そう思った。