雨が好きだ。

しとしとと降っている優しい雨は、つめたくもあり、あたたかくもある。柔らかい絹糸に包まれている感覚と、冷たい"におい"が鼻腔から入ってくるのを感じる。

ザーザーとした雨は激しい音とともに瓦を穿ち、雨樋を伝って流れていく。周りの雑音なんて聞こえない。自分だけの世界を独り占めできる。沸き立つ声が打ち消してくれるから好きな人と話している時に周りの目も耳も気にしなくて済む。

 

元々は天文部の人だから、雨が嫌いだって思われがちだけど、雨にだって楽しみ方はある。晴れの日に見る星空だって勿論好きだけど、雨の日も捨てたもんじゃない。部屋で本を読むもよし、課題を終わらせるもよし、雨の日なのに暑いからっていって部屋で冷房をつけるのもよし!普段晴れている時よりも自由度が高いかもしれない。

 

つつっと、指が窓を撫でる。通った後に水滴が残る。反対側から手を伸ばしてみる。ガラスを通して雨の冷たさと自分の熱がわかる。溜まっていく水が、しだいに自分の心と同じように少しずつ浮き足立っていくのを感じる。

 

今、あなたはなにをしているだろうか。少し寒いので、コーヒーを飲んでいるのだろうか。夢を見ているだろうか。ゴロゴロしていて、冷たいシーツの感触を背中で堪能しているかもしれない。私の夢を見ているだろうか。同じようにガラスを撫でているだろうか。ガラスに息を吹きかけて、ハートマークを描いているかもしれない。雲の裂け目を待っているかもしれない。傘をさして、誰かのところに行こうとしているかもしれない。

気分が重く沈むのと同時に、視界が開けるのを今か今かと待ち望んでいるかもしれない。

 

 

 

 

私と一緒だ。

 

 

 

 

雨の日に、しっとりとした過ごし方をしっとりとした人間と一緒に。

夜もすがら。