"マトン"
と言われて、何を最初に思い浮かべるだろうか。
鍋つかみ、あなたはそう答えるかもしれない。
それではミトンだ。
最近流行りのアイツ、そう答える人もいるかもしれない。
それはチョコミントだ。
どんどん話が流れてしまっている。訂正せねば。
迷える仔羊による迷える仔羊のための美味であるマトンカレーへのなりかた、それは程よくヘルシーである事だ。
羊として年季が入っていると、煮込んだ時に柔らかく、そして口当たりの良いマトンカレーになれると、羊はそう思っている。
かくいう羊も若い頃は色々ヘマをやらかした。そして、このはてなブログを書き始めたことがきっかけで思い出した事もある。
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高校時代、私には付き合っている人がいた。
いや、正確に言うと付き合っていたかは定かではないのだけれど、それは個人的に聞くか、もしくは聞き流してほしい。
私だって、牡羊な時がある。自分が主役だと勘違いして空に線を描かれたい時だってあるはずなのだ!
ありがちな高校生の恋愛、ありがちな時間!
LINEが帰ってこないと言っては思い悩み、電話しては寝落ちという失態をかます、という極々平凡な生活を送っていた迷える仔羊であったが、ある日の夜、珍しく私が起きていた時間に事件は起きた。
LINEの通知が来る。
〇〇(彼女の名前)が画像を送信しました。
?
重ねて通知が来る。
こ れ っ て 先 輩 で す か ?
(彼女は後輩)
???????????????????
遂に誰にも知られないとタカをくくっていた、本人の目から見ても気持ち悪いと思える程のオタク活動をしているTwitterの別垢が見つかったのか(これでも充分に死ねる)、
はたまたしてもいない浮気を収めたツーショット写真が流出したのか、
焦りのままにトークを開く。
そこには
当時私が書いていた、ポエム満載のアメブロのスクリーンショットがあった。
ああ、終わった…
取り敢えず、冷や汗がダラダラのまま、
「違うよ〜」と軽く牽制のジャブを入れてみる。
フキダシの上に現れる既読の文字。
だが、
返事が無い。
返事が無いのだ。
う、う〜〜〜ん???
なんとかなったのか……?誤魔化せたのか……??
取り敢えず私は寝ることにした。
次の日の朝、彼女に話を聞くと、どうやらそんなトークは送った記憶が無いらしいのだ。
更に聞くことによると、
夜になると(これはダジャレの意味では無い)、彼女の母親が彼女のスマートフォンをいじくり回すことが度々あるらしい。
彼女の渾身ストレートは骨身に沁みた。
それどころか、パンチは脳を揺さぶり、私の普段使わない頭をフル回転させた。
あっ………………………………
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つまり羊は、
知りもしない"彼女の母親"に
自分の書いていた
"ポエム満載"の
アメブロを特定されたのだ。
長い人生の中で、ここが死に時ってものがあるのなら、それはまさしくその瞬間であると今でも言えるだろう。それでも羊は生きている。不思議だね…
自分が、どれだけちっぽけな奇跡の元でなんとか酒に溺れる事もせず、川にも溺れず、見習い工にもならずに生きているか。
どれだけ細い蜘蛛の糸の上を目印も目標も無いままに歩いているか、それを認識する様な事件だった。
食用羊はすべからく美味しく調理されるが、羊にも羊生があるのである。