塔の上のシュレック

誰もいないエレベーターに乗り、迷わず1番上の階のボタンを押す。ドアはほどなくして閉口して、私だけを口の中に入れたまま建物を登って行く。こんな暑い日に1人だけを乗せて動くのか…という声が聞こえそうだ。だから閉口だ。エレベーターの中は程よく(程よく?)蒸していて、まるで人の口の中みたいだった。口の中に入ったことはないけれど、入るならこんな風に無口な人の中に入りたいもんだ。噛まれたくないし。

 

 

自分のいける1番上の階にきた。土曜日の昼下がりこんなところには誰かがいるはずもなく、大学生はご苦労なことに群れをなして遊びに行っているかバイトをしているか好きな人と家でゲームをしてるかのどれかだろう。窓を少しだけ開けてみる。やはり上階ともなると全開には出来ないが、1/3くらいは開けることができた。風が強い。梅雨明けの風が服を打ち、冷房で冷やされた階に"ぬるさ"が溶けていく。

遠くには山のシルエットがみえる。空が青いのってどうやって伝えればいいんだろうね。

雲が浮いている。

今日の空は嫌になるほど晴れ晴れとしていた。

 

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筋のような雲の線を追いかけて、私は階をぐるりと回ってみる。

 

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眼下を人々が歩いている。2人で寄り集まっていたり、1人でいたり。そのどれもが影のない光の粒に見えた。

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地上からの高さで言ったら自分より上にいる人はそこまで多くはないだろうし、自分は今この高さにいる王様みたいなものなんじゃないか。そう思わせるには十分な高さ。世の中はそんなに甘くないけど。

自分より高い場所にいる雲はどれだけ自由で、下にいる光の粒の事をどのように俯瞰しているのだろうか。そこからの眺望はどんなものなのだろうか。夜の雲はもっと高いのだろうか。

 

長くなり過ぎてしまった毛をいじる。

そろそろ刈らないとな、と思う。

 

 

 

 

 

 

ぬるい風がカーテンの頬を撫で、膨らませた。