うつせみ

頭がぼーっとしてきた。

 

こんなに夜も深まっているというのに、まだ蝉の声が聞こえてくる。

リビングからはいつもの兄と母が喧嘩をする声。

騒々しいったりゃありゃしない。

 

自分もいずれは兄のように、"将来"だとか、"やりたいこと"と見つめ合わなければいけないのだろうか。そんな気持ち悪い両想い、こっちから願い下げだ。

 

未来の話は嫌いだ。広いホールでひとりで何もない演目を見させられているような気がして、目の前にただ広い空間が待ち受けているのが分かって不安な気持ちになる。声をかけてもただ自分の声が広がっていくだけ。ああ嫌だ。

 

部屋の網戸に蝉が止まった。

じりじりと、出来の悪い目覚まし時計みたいに騒音が部屋をかき回す。

頭がぐるぐるしてきた。私が回っているのか、世界が回っているのか、それとも地球が回っているのか。

 

 

ゆっくりと私から見える景色は白から黒へと変わっていく。

 

さよなら。